夜の峠道。 リュウは、TZR250のエンジンを温めながら、ヘルメットを被った。 空気は湿っていて、タイヤの下のアスファルトが静かに呼吸しているようだった。
彼は、走る理由をもう知っていた。 それは、逃げるためでも、証明するためでもない。 ただ、“問いに耐えるため”だった。
アクセルを開ける。 エンジンが吠える。 身体が前に出る。 だが、今回は違った。
彼の頭の中には、問いがあった。 「俺は、なぜこの速度を必要とするのか?」 「この衝動は、どこへ向かっているのか?」 「止まったとき、俺は何を見つけるのか?」
問いは、彼の背中に乗っていた。 だが、重くはなかった。 むしろ、問いがあることで、彼の走りは“意味”を持ち始めていた。
峠を抜け、海岸線に出る。 風が顔を撫でる。 リュウは、バイクを止めずに走り続けた。 だが、心の中では、静かに問いと対話していた。
「俺は、走ることで問いを遠ざけていた。 でも今は、走ることで問いに近づいている。 それは、衝動と問いが共存する瞬間だ」
先生は、この場面を書き終えた後、しばらく海を見つめていた。 ジョムティンの夜も、静かに問いを運んでいた。
その夜、先生は日記にこう記した。
「衝動は、問いをかき消すものではない。 それは、問いを運ぶ乗り物でもある。 走りながら考えること。 それが、人生の中で最も美しい瞬間かもしれない」

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