6.4 走りながら、考えるという奇跡

第6章 ジョムティンビーチにて、親友との再会

夜の峠道。 リュウは、TZR250のエンジンを温めながら、ヘルメットを被った。 空気は湿っていて、タイヤの下のアスファルトが静かに呼吸しているようだった。

彼は、走る理由をもう知っていた。 それは、逃げるためでも、証明するためでもない。 ただ、“問いに耐えるため”だった。

アクセルを開ける。 エンジンが吠える。 身体が前に出る。 だが、今回は違った。

彼の頭の中には、問いがあった。 「俺は、なぜこの速度を必要とするのか?」 「この衝動は、どこへ向かっているのか?」 「止まったとき、俺は何を見つけるのか?」

問いは、彼の背中に乗っていた。 だが、重くはなかった。 むしろ、問いがあることで、彼の走りは“意味”を持ち始めていた。

峠を抜け、海岸線に出る。 風が顔を撫でる。 リュウは、バイクを止めずに走り続けた。 だが、心の中では、静かに問いと対話していた。

「俺は、走ることで問いを遠ざけていた。 でも今は、走ることで問いに近づいている。 それは、衝動と問いが共存する瞬間だ」

先生は、この場面を書き終えた後、しばらく海を見つめていた。 ジョムティンの夜も、静かに問いを運んでいた。

その夜、先生は日記にこう記した。

「衝動は、問いをかき消すものではない。 それは、問いを運ぶ乗り物でもある。 走りながら考えること。 それが、人生の中で最も美しい瞬間かもしれない」

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