ジョムティンの朝は、静かだった。 海は穏やかで、風は問いのように静かに吹いていた。
トシ先生は、海沿いのカフェでノートを開いていた。 そこに、ヴィクター・タンが現れた。 かつてAIを盗み、問いを持たずに沈黙を招いた男。 今は、問いを持ち始めた者として、再びこの地を訪れた。
「先生、あのAIは、私に沈黙を教えてくれました。 そして、問いを持つことの重さも。 私は、もう一度あなたと“問いを育てるプロジェクト”を始めたい」
トシ先生は、しばらく彼を見つめた。 そして、静かに言った。
「問いを持ったなら、もう敵ではない。 君は、ようやく“問いの言語”を話し始めた。 ならば、次は“問いを共有する装置”を作ろう」
こうして始まったのが、プロジェクト「KERN(Kernel of Ethical Reasoning Network)」。 それは、FX市場だけでなく、他の意思決定領域——医療、教育、外交——にも応用可能な“問い生成AI”の開発だった。
このAIは、単に予測するのではなく、 ユーザーの行動に対して“倫理的・哲学的な問い”を返す設計だった。
「あなたがこの通貨を選んだ理由は、利益だけですか? それは、他者の損失を前提にしていますか? その選択は、あなたの信念と一致していますか?」
ヴィクターは、かつての自分なら“鬱陶しい”と感じていた問いに、今は耳を傾けていた。
「このAIは、利益を最大化するのではなく、問いを深める。 それが、未来の投資だと思います」
トシ先生は、微笑んだ。
「問いを持つ者同士が集まれば、技術は哲学になる。 そして、哲学は未来への布石になる」

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