4.5 信頼の循環、ナロンへの第一歩

第4章 金融と投資に対する一考察

4.5 信頼の循環、ナロンへの第一歩
—投資とは、問いを託すこと—

先生は、ナロンのプロジェクト「TrustRoots」に対して、少額ながらも最初の投資を決めた。 契約は簡素だった。エクセルで作られたキャッシュフロー予測、手書きの覚書、そして握手。 だが、その瞬間に生まれたのは、資本ではなく“信頼”だった。

「これは様子見の一歩だ。 でも、君の問いに賭けてみたい。 信用とは何か、君のやり方で証明してみてくれ」

ナロンは深く頭を下げた。 「先生、僕はこの資金を、村の信用記録システムの実証実験に使います。 結果が出たら、必ず報告します」

数ヶ月後、ナロンから報告が届いた。 チェンライの小さな村で、TrustRootsの信用記録が実際に使われ始めたという。 それにより、3人の女性が農業用の小口融資を受けることができた。 利子は低く、返済は順調。 そして、先生の投資に対する最初の配当が届いた。

その金額は大きくはなかった。 だが、先生はその配当を手に、次の若手起業家のもとへ向かった。 バンコクの小さなカフェで、彼は“パーン”という名の若者と会った。 彼は、都市部の若者向けに“金融リテラシーをゲームで学ぶアプリ”を開発していた。

先生は、ナロンからの配当を封筒に入れて渡した。 「これは、ナロンからの信頼の証だ。 僕はそれを、君に託す。 資金ではなく、問いを受け継いでほしい。 君のやり方で、次の一歩を踏み出してくれ」

パーンは驚きながらも、静かに受け取った。 「僕も、誰かにこの問いを渡せるように頑張ります」

その夜、先生は日記にこう記した。

「投資とは、資本の移動ではない。 問いの継承である。 信頼は、配当として返ってくる。 そして、それは次の問いへと渡される」

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