5.2 格闘家の次なる一手、挑戦
—拳から食卓へ、問いは形を変える—
シラチャのジムの隅、汗の匂いが残るマットの上で、コーチーは先生に新しい話を持ちかけた。 「先生、ちょっと変な話かもしれないけど……次は“ダイエット”をやろうと思ってる。 対象は、日本人の駐在員の奥さんたち。 彼女たち、こっちに来てから太るんだよ。ストレスと食生活の変化で」
先生は、少し驚いた。 仮想通貨の短期トレードから、主婦向けのダイエット事業へ。 あまりにもジャンルが違う。 だが、コーチーは真剣だった。
「俺のジムに、たまに奥さんたちが来るんだ。 でも、格闘技は怖いって言う。 だから、もっと優しい形で、でも“本物のメソッド”を使って、 食事と軽い運動、あとメンタルケアも含めたプログラムを作ろうと思ってる」
先生は、彼のノートを覗いた。 そこには、仮想通貨のチャートではなく、 “朝のプロテインスムージー”や“週3回のウォーキングメニュー”が並んでいた。
「今はまだ構想段階だけど、 もし形になったら、先生にも見てもらいたい。 投資してくれとは言わない。 ただ、問いとして、価値があるかどうか——それを知りたい」
先生は、しばらく黙っていた。 そして、海辺のカフェに戻った後、ノートにこう記した。
「格闘家が、主婦の食卓に問いを投げる。 それは滑稽かもしれない。 だが、問いとは、滑稽さの中にこそ芽吹く。 投資とは、ジャンルではなく、問いの深さに賭けること。 僕は、まだ賭けるかどうか決めていない。 でも、この問いは、確かに僕の中で動き始めている」

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