2.3.投資家として(ビナミルク株が20倍に)

第二章 投資家として

ホーチミンで買ったビナミルク株が2000万円に
—若き日の直感と、通訳との偶然の出会い—

2017年、僕はホーチミンにいた。 まだ30代半ば、投資家としての輪郭はぼんやりしていたが、 「現地の空気を感じることが、価値を見つける第一歩」 という信念だけは、すでに腹に落ちていた。

ホーチミンは、熱気に満ちていた。 バイクの群れ、屋台の香り、急速に伸びる高層ビル。 街の鼓動が、未来を予感させていた。 だが、僕は不動産ではなく、株式に目を向けていた。

きっかけは、現地のスーパーだった。 棚にずらりと並ぶ「Vinamilk(ビナミルク)」の製品。 牛乳、ヨーグルト、チーズ—— どれも手頃な価格で、地元の人々が当たり前のように手に取っていた。

「この会社、強いな」 「生活に溶け込んでる。これは、価値だ」

そう思った僕は、すぐに動いた。 だが、ベトナム株式市場は外国人にとって簡単ではなかった。 言語の壁、制度の違い、口座開設の煩雑さ—— そこで僕は、通訳を雇うことにした。

彼の名前はフン。 30代のベトナム人で、元は英語教師だったという。 物腰が柔らかく、だが芯のある男だった。 彼は僕の意図をすぐに理解し、証券会社との交渉を手伝ってくれた。

「ビナミルクは、国民的企業です。 でも、外国人枠は限られていて、すぐに埋まりますよ」 フンはそう言いながらも、僕のために動いてくれた。 彼の人脈と粘り強さのおかげで、僕はなんとか口座を開設し、 100万円分だけ、ビナミルク株を購入することができた。

そのときの僕は、まだ“確率的確信”という言葉を持っていなかった。 だが、感覚はあった。 スーパーの棚、地元の人の買い方、商品の質、価格帯—— それらが、僕の中で“これは伸びる”という確信に変わっていた。

「これは、感情じゃない。 生活の中にある構造を見た結果だ」

フンは、僕の投資スタイルに興味を持ち始めていた。 「あなたは、数字よりも人を見ますね」 僕は笑って答えた。 「数字は、後からついてくる。 人の動きが、先に教えてくれるんだ」

それから数年。 ビナミルクの株価は、じわじわと上がり続けた。 ベトナム経済の成長とともに、生活インフラとしての乳製品需要も拡大。 2025年現在、僕の100万円は、約2000万円になっている。

だが、僕はそれを“成功”とは呼ばない。 それは、現地の空気を感じ、生活の流れを読み、 そして、フンという“生活者の目を持つ通訳”と出会えたからこそ掴めたものだった。

「投資とは、構造を読むこと。 構造は、生活の中にある。 そして、生活は、人の目に宿る」

今でも、ホーチミンに行くとフンと会う。 彼は今、ベトナムのスタートアップ企業で働いている。 「あなたの投資は、僕の人生にも影響を与えました」 そう言ってくれる彼の目は、あのときと同じように澄んでいる。

この節は、僕が“株式投資の原点”を掴んだ記録だ。 そして、生活の中にある“構造”を見抜く力が、 数字を超えて未来を掴むことを教えてくれた瞬間でもある。

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