3.6 トシ先生と佐野、チェンマイで再会する
—静寂の街で交わされた、人生の“余白”についての対話—
チェンマイの朝は、静かだった。 トシ先生は、旧市街のゲストハウスに滞在していた。 木造の建物に、手入れの行き届いた庭。 朝は鳥の声とともに目覚め、近くのカフェで温かいコーヒーを飲む。 「ここは、時間がゆっくり流れている」 そう感じながら、彼はノートを開いていた。
その日、先生はニマンヘミン通りの書店に立ち寄った。 観光客向けではなく、地元の人々が静かに本を選ぶ場所。 棚の隅に、英語とタイ語が混ざった哲学書が並んでいた。 ふと、隣で本を手に取った人物に目をやると、見覚えのある横顔があった。
「佐野さん…?」 振り返ったその男は、驚いた表情を浮かべた。 「先生…!まさか、こんなところで」 二人は思わず笑い合った。 マレーシア以来、半年ぶりの再会だった。
佐野は、チェンマイ郊外の瞑想センターに滞在していた。 「週に一度だけ、街に降りてきて本を買うんです。 ここでは、スマホも使わず、ただ沈黙の中で過ごしてます」 彼は、以前よりもさらに穏やかな表情をしていた。
二人は近くのカフェに入り、再び語り合った。 佐野は、瞑想の中で得た気づきを語った。 「数字の世界では、余白は“無駄”でした。 でも、ここでは余白こそが“豊かさ”なんです」 トシ先生は頷いた。
「僕も、最近は“何もしない時間”を意識してます。 それが、思考の深さにつながる気がして」 佐野は微笑んだ。
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