3.11 風の継承

第3章 アジア各地での投資と生活
3.11 風の継承 —若者との出会いと、未来への静かなまなざし— ケップの図書館は、午後になると地元の若者たちが集まってくる。 英語の勉強をする者、静かに読書にふける者、そして、ただ涼みに来る者。 トシ先生は、田村さんと並んで座りながら、彼らの様子を静かに見守っていた。 その中に、一人の青年がいた。 名前はソク・リナ。 大学で観光学を学びながら、週末は図書館でボランティアをしているという。 「先生、日本から来られたんですね」 リナは、丁寧な英語で話しかけてきた。 その眼差しには、好奇心と敬意が混ざっていた。 「ええ。昔、ここで出会った方を訪ねてきたんです」 先生は微笑みながら答えた。 「この町は、静かで美しいですね」 リナは、少し照れたように笑った。 「でも、変わり始めています。観光客が増えて、土地の値段も上がって。 僕たちの世代は、どうやってこの静けさを守ればいいのか、悩んでいます」 その言葉に、先生は深く頷いた。 「静けさは、守るものではなく、育てるものかもしれません。 誰かが気づき、誰かが受け継ぐことで、形を変えながら続いていく。 それは、風のようなものです」 リナは、しばらく黙っていた。 そして、静かに言った。 「僕は、田村さんのような生き方に憧れます。 数字ではなく、空気で暮らす。 それって、すごく豊かなことだと思うんです」 先生は、田村さんの方を見た。 彼は窓際で、静かに本を読んでいた。 その姿は、まるで風景の一部のようだった。 「田村さんは、何も教えようとはされません。 でも、彼の在り方そのものが、何かを伝えている。 それが、“継承”なのかもしれませんね」 その夜、先生は宿のベランダで日記を開いた。 そこに、こう記した。 「未来とは、若者が過去に耳を傾けることで生まれる。 継承とは、教えることではなく、気づかせること。 そして、気づいた者が、静かに風を受け継いでいく」 ケップの夜風が、ページをそっと揺らした。 先生は、風の中に田村さんの声を、そしてリナのまなざしを感じていた。

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