2.1.投資家として(言葉を覚え、土地を歩き、価値を見つける)

第二章 投資家として

—言葉を覚え、土地を歩き、価値を見つける—

投資は、情報の戦いだと言われる。 だが、僕はそれを信じていない。 本当に価値あるものは、数字の裏に隠れている。 それは、現地の空気であり、 人々の暮らしであり、 そして、言葉の響きだ。

2010年、日本では海外不動産投資がブームになっていた。 SNSには、南国のコンドミニアムや、 「年利10%保証」の広告が溢れていた。 誰もが、楽して儲けたいと思っていた。 だが、僕は違った。

「現地語を覚えなければ、何も見えない」 それが、僕の信条だった。 英語だけでは足りない。 マレー語、タイ語、ベトナム語、クメール語—— 僕は、旅の合間に語学学校に通い、 現地の人と話すことを優先した。

言葉を覚えると、世界が変わる。 不動産屋の本音が聞こえるようになる。 タクシー運転手の愚痴が理解できるようになる。 市場の値札の意味がわかるようになる。 そして何より、土地の「温度」が感じられるようになる。

そんなある日、僕の元に一人の若者が現れた。 名前はユウタ。 都内のIT企業を辞め、 「先生のように、地に足のついた投資がしたい」と言ってきた。 最初は、ただの熱意だけの青年だと思った。 だが、彼の目には、僕がかつて持っていた「飢え」があった。 知りたい、見たい、触れたい—— その欲求が、彼を動かしていた。

僕は彼を連れて、マレーシアの地方都市へ向かった。 SNSで紹介された物件の多くは、 日本人向けの「見せ物」だった。 実際に現地に行ってみると、 周囲は空き地ばかりで、 住民の姿は見えなかった。 それでも、広告には「人気急上昇エリア」と書かれていた。

ユウタは、最初その広告に心を動かされていた。 「先生、ここ、良さそうじゃないですか?」 僕は首を振った。 「人が住んでいない場所に、価値はない」 そう言って、僕は彼を市場の近くへ連れて行った。 バイクが行き交い、子どもたちが走り回る路地裏。 そこにこそ、生活があり、価値があった。

ユウタは驚いていた。 「こんな場所が、投資対象になるんですか?」 僕は笑った。 「数字だけ見ていたら、絶対に見つからない場所だよ」 そして、彼に言った。 「まずは、言葉を覚えろ。現地の人と話せ。 彼らの生活を知ることが、投資の第一歩だ」

ユウタは、僕の言葉を真に受けた。 毎朝、語学学校に通い、 午後は市場で買い物をし、 夜は屋台で地元の人と酒を酌み交わした。 彼の耳は、次第に現地の言葉を拾い始め、 目は、広告の裏にある「嘘」を見抜くようになっていった。

ある日、僕たちは古びたアパートを見つけた。 誰もが見向きもしない場所だったが、 近くに新しい高速道路が通る予定だった。 地元の人が「ここは変わる」と言っていた。 僕は、その言葉を信じた。 ユウタは、半信半疑だった。 「本当に、こんな場所が…?」 僕は言った。 「信じるのは、数字じゃない。人の言葉だ」

数年後、その町は変わった。 アパートの価値は2倍になり、 家賃収入も安定した。 ユウタは、その物件の管理を任され、 今では自分の弟子を持つまでになった。

投資とは、信じることだ。 だが、誰かを信じるのではない。 自分の感覚を信じることだ。 そして、その感覚は、歩いた距離に比例する。

この章は、僕が投資家として目覚めた記録であり、 ユウタが弟子として育っていく物語でもある。 言葉を覚え、土地を歩き、価値を見つける。 それは、遠回りのようでいて、 最も確かな道だった。

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