第一章 旅の原点と人生の転機 1.5.旅の原点と人生の転機(5) 数日後、株価は動いた。 下がった。 静かに、確実に。 まるで、誰かが息を潜めて売っているようだった。僕は、画面を見つめた。 数字は嘘をつかない。 でも、数字はすべてを語らない。“裏ルートもある”──その言葉が、頭をよぎった。 あの男は、何を... 2025.08.25 第一章 旅の原点と人生の転機
第一章 旅の原点と人生の転機 1.4.旅の原点と人生の転機(4) 上海の街は、情報で満ちていた。 新聞、噂、証券会社の数字。 でも、それらは“点”でしかなかった。 僕が求めていたのは、点と点がつながる“線”。 そして、その線が描く確率だった。予感は、信じない。 空気感と数字の整合性。 それだけが、僕の羅針... 2025.08.24 第一章 旅の原点と人生の転機
第一章 旅の原点と人生の転機 1.3.旅の原点と人生の転機(3) 小籠包の湯気が消えかけた頃、 僕は街の奥へと足を踏み入れた。 観光客の地図には載っていない通り。 そこに、証券会社があった。看板は色褪せていた。 入口のガラスには、手書きの株価一覧。 中に入ると、蛍光灯の光が白く、 机の上には紙と電卓。 パ... 2025.08.23 第一章 旅の原点と人生の転機
第一章 旅の原点と人生の転機 1.2.旅の原点と人生の転機(2) 1997年、上海。 貨物船の甲板から降りた瞬間、 空気が違った。 湿度と熱気が混ざり合い、 都市の欲望が、皮膚に触れてくるようだった。大通りの角に、小さな店があった。 鉄の蒸籠から立ち上る湯気。 小籠包、一籠、数元。 それは、値段ではなく“... 2025.08.22 第一章 旅の原点と人生の転機
第一章 旅の原点と人生の転機 1.1.旅の原点と人生の転機(1) —26歳、貨物船の甲板で風を知る—人生が動き出す瞬間は、いつも静かだ。 誰にも告げず、誰にも祝われず、 ただ、風のように始まる。 世界の広さに気づいたとき、 僕は何かを得ようとしたのではない。 何かから離れたかったのかもしれない。 欲望の声... 2025.08.22 第一章 旅の原点と人生の転機
第0章 エピローグ 0.2 エピログ(2) 僕の名前は、トシ。 厳格なサラリーマンの父と、専業主婦の母のもとで育った。 資金もノウハウもなかった、普通の家庭。 お金も、学歴も、何もなかった。 ただ、祖父が絵描きだった。 自由で、創造的で、風のように生きる人だった。 僕は、その背中に、... 2025.08.22 第0章 エピローグ
第0章 エピローグ 0.1 エピログ(1) 「不条理に意味を求めるのではなく、それに反抗することで人は自由になる。」 — アルベール・カミュ世界は、思い通りには動かない。 数字も、計画も、予測も、時に裏切る。 それでも僕は、歩き続けてきた。 地図のない道を、風の向くままに。投資は、未... 2025.08.22 第0章 エピローグ